はじめに
こんにちは、ねむです。今回は6年以上前に組んだ自作PCをスペックアップして、AI画像生成という技術を快適に楽しんでみたいと思う今日この頃、その検討結果について皆さんにシェアして、同じ悩みを抱えている方々への参考になれば幸いです。
AI画像生成に必要なスペックとは?
AI画像生成とは、テキストや画像などの入力から、新しい画像を生成する技術のことです。近年、深層学習やGANなどの技術の発展により、驚くほどリアルで多様な画像を生成できるようになりました。
しかし、その反面、AI画像生成には高いスペックが必要とされます。
AI画像生成に必要なスペックは、使用するソフトウェアやモデルによって異なりますが、一般的には以下のような要件があります。
- グラボ:CUDAコアやVRAMが多いほど良い。最低でも4GB以上のVRAMが推奨される。
- メモリ:16GB以上が推奨される。
- ストレージ:高速な読み書きができるNVMe SSDが推奨される。インストールサイズは12GB以上が必要。
例えば、Stable Diffusion WebUIというAI画像生成のWebインターフェースを使う場合は、上記の要件を満たす必要があります。
Stable Diffusion WebUIは、Stable DiffusionというAI画像生成のツールをブラウザ上で操作できるようにしたもので、様々なモードやオプションを提供しています。
現在の筆者のノートPCでは、グラボが内蔵GPUのみなのでほぼ実行不可能(出来ないわけではないけど激遅)です。
また、6年前に組んだ自作PCでは、当時購入したGeforce GTX1060 6G版では力不足(1枚作成するだけで50秒近くかかる)です。これではAI画像生成を楽しむことができません。
前述のスペック要件も、あくまで実行上の必要最低限といったレベル感なので、一定の快適度を担保したスペックを満たすには更なる上位パーツが必要となってきます。
そこで、筆者は自作PCのスペックアップを検討することにしました。次章からは、現在の自作PCのスペックとスペックアップで達成したい目標を紹介します。
現在の自作PCのスペック
さて、まずは現在の自作PCのスペックですが以下の表にまとめました。
項目 | パーツ |
---|---|
CPU | AMD Ryzen 5 1600 BOX |
メモリ | Corsair CMN16GX4M2Z3200C16 × Corsair CMK16GX4M2A2666C16 |
ストレージ | SAMSUNG 950 PRO M.2 MZ-V5P512B/IT × WESTERN DIGITAL WD60EZAZ-RT |
マザーボード | ASUS ROG STRIX B350-F GAMING |
グラボ | MSI GTX 1060 AERO ITX 6G OC |
電源 | COOLER MASTER V650 Semi-Modular RS650-AMAAG1-JP |
ケース | JONSBO U4R |
この構成で当時は約13万円ほどかかった記憶があります。
CPUやメモリは、当時登場したばかりの第一世代Ryzen5という最新のAMD製品を選んだことでコスパを高めました。
グラボは当時最新だったGTX1060を選びましたが、6GB版ではVRAM不足を感じることもありました。
ストレージはNVMe SSDとHDDを組み合わせました。
マザーボードはASUS製品を選びましたが、後にBIOSのアップデートが不安定だったり、Win11への対応がなかったりと不満が出てきました。
電源は650Wのものを選びましたが、今思えばもう少し余裕を持った方が良かったかもしれません。
ケースはコンパクトでシンプルなものを選びましたが、ケーブルマネジメントや冷却性能には難がありました。
スペックアップで達成したい目標
次に、スペックアップで達成したい目標ですが以下のようになります。
- AI画像生成性能の大幅な改善
- 動画エンコード性能の強化
- AV1エンコードの実現
- Cities Skylineを快適に楽しみたい
AI画像生成性能の改善は、最近流行っているAI画像生成サービスやソフトウェアを使ってみたいという理由からです。現在のグラボではCUDAコアやVRAMが足りず、画像生成に時間がかかりすぎます。
動画エンコード性能の強化は、動画編集や配信をする際に必要な処理能力を高めたいという理由からです。
現在のCPUではエンコードに時間がかかりすぎます。AV1エンコードの実現は、最新の動画圧縮規格であるAV1を使ってみたいという理由からです。現在のグラボではAV1エンコードに対応していません。
Cities Skylineを快適に楽しみたいは、筆者が好きなシミュレーションゲームであるCities Skylineを高画質でスムーズにプレイしたいという理由からです。現在のグラボでは高画質設定ではフレームレートが低下します。
スペックアップのプランと評価
上記の目標を達成するためのスペックアップのプランと評価をしてみました。予算順に以下の3つのプランを考えました。
- 予算:低 グラボのみを変更
- 予算:中~高 グラボ、CPUを変更
- 予算:高 グラボ、CPU、マザーボードを変更
各プランごとに変更後のスペックとメリット・デメリットをまとめました。
プラン1:グラボのみを変更
<変更後>
項目 | パーツ |
---|---|
CPU | AMD Ryzen 5 1600 BOX |
メモリ | Corsair CMN16GX4M2Z3200C16 × Corsair CMK16GX4M2A2666C16 |
ストレージ | SAMSUNG 950 PRO M.2 MZ-V5P512B/IT × WESTERN DIGITAL WD60EZAZ-RT |
マザーボード | ASUS ROG STRIX B350-F GAMING |
グラボ | ZOTAC GAMING GeForce RTX 4060 8GB SOLO ZT-D40600G-10L |
電源 | COOLER MASTER V650 Semi-Modular RS650-AMAAG1-JP |
ケース | JONSBO U4R |
<予算>
- 4.7万円程度(2023/7/23時点)
<メリット>
- 目標をすべて達成できる
- 予算が低く抑えられる
<デメリット>
- RTX4060の性能を活かしきれない(マザーボードの接続インターフェースはPCIe3.0止まりだったり、NVMe SSDもPCIe3.0止まりだったりで、物理的なインターフェース仕様による制約が最大のネック)
- Win11への正式なアップグレードは不可(CPUが対応していない)
プラン2:グラボ、CPUを変更
<変更後>
項目 | パーツ |
---|---|
CPU | AMD Ryzen 5 5600 BOX |
メモリ | Corsair CMN16GX4M2Z3200C16 × Corsair CMK16GX4M2A2666C16 |
ストレージ | SAMSUNG 950 PRO M.2 MZ-V5P512B/IT × WESTERN DIGITAL WD60EZAZ-RT |
マザーボード | ASUS ROG STRIX B350-F GAMING |
グラボ | ZOTAC GAMING GeForce RTX 4060 8GB SOLO ZT-D40600G-10L |
電源 | COOLER MASTER V650 Semi-Modular RS650-AMAAG1-JP |
ケース | JONSBO U4R |
<予算>
- 6.6万円程度(2023/7/23時点)
<メリット>
- 目標をすべて達成できる
- Win11への正式なアップグレードは可能
<デメリット>
- RTX4060の性能を活かしきれない(マザーボードの接続インターフェースはPCIe3.0止まりだったり、m.2SSDもPCIe3.0止まりだったりで、物理的なインターフェース仕様による制約が最大のネック)
- 予算が上がる
プラン3:グラボ、CPU、マザーボードを変更
<変更後>
項目 | パーツ |
---|---|
CPU | AMD Ryzen 5 5600 BOX |
メモリ | Corsair CMN16GX4M2Z3200C16 × Corsair CMK16GX4M2A2666C16 |
ストレージ | SAMSUNG 950 PRO M.2 MZ-V5P512B/IT × WESTERN DIGITAL WD60EZAZ-RT |
マザーボード | ASRock B550M Steel Legend |
グラボ | ZOTAC GAMING GeForce RTX 4060 8GB SOLO ZT-D40600G-10L |
電源 | COOLER MASTER V650 Semi-Modular RS650-AMAAG1-JP |
ケース | JONSBO U4R |
<予算>
- 8.1万円程度(2023/7/23時点)
<メリット>
- 目標をすべて達成できる
- RTX4060の性能を最大限に活かせる(マザーボードの接続インターフェースがPCIe4.0に対応している)
- Win11への正式なアップグレードは可能
<デメリット>
- 予算的にギリギリ
各プランで選定したパーツ紹介
グラボ:ZOTAC GAMING GeForce RTX 4060 8GB SOLO ZT-D40600G-10L
最安価格:4.7万円(2023/7/23時点)
NVIDIAのミドルレンジGPU「GeForce RTX 4060」を搭載したグラフィックボードです。
3072ユニットのCUDAコアと8GBのGDDR6メモリを備え、AIアルゴリズムやリアルタイムレイトレーシングに対応しています。
また、90mmのシングルファンとコンパクトなボード長163mmで、省スペースPCに最適です。
HDMI2.1aとDisplayPort1.4aを合わせて4つの出力端子を持ち、最大4画面出力が可能です。
8ピンの補助電源コネクタ1つで動作し、推奨電源容量は500Wです。
AI画像生成に挑戦したい方におすすめのグラフィックボードです。
- 現行パーツ(GTX1060 6G版)とのスペック比較表
項目 | GTX1060 6G版 | RTX4060 |
---|---|---|
アーキテクチャー | Pascal | Ada Lovelace |
コードネーム | GP106 | AD107 |
発売時期 | 2016 Q3 | 2023 Q2 |
CUDAコア | 1280基 | 3072基 |
L1キャッシュ | 48KB | 128KB |
L2キャッシュ | 1536KB | 24MB |
FP16 (半精度) | 68.36GFLOPS | 15.11TFLOPS |
FP32 (単精度) | 4.375TFLOPS | 15.11TFLOPS |
FP64 (倍精度) | 136.7GFLOPS | 236.2GFLOPS |
ベースクロック | 1506MHz | 1830MHz |
ブーストクロック | 1708MHz | 2460MHz |
メモリ容量 | 6GB GDDR5 | 8GB GDDR6 |
メモリバス幅 | 192bit | 128bit |
メモリ帯域幅 | 192.2GB/s | 272GB/s |
プロセスルール | TSMC 16nm | TSMC 5nm |
TDP | 120W | 115W |
インターフェース | PCIe 3.0 x16 | PCIe 4.0 x8 |
Time Spy (DX12) | 4377 | 10800 |
Fire Strike (DX11) | 11000 | 28700 |
Port Royal (DXR) | 802 | 6100 |
Cinebench R23 (OpenGL) | 99.66fps | 142.34fps |
Passmark | 10252 | 19988 |
Blender (BMW27) | 4分29秒 | 1分47秒 |
CPU:AMD Ryzen 5 5600 BOX
最安価格:1.9万円(2023/7/23時点)
AMDのミドルレンジCPU「Ryzen 5 5600」を搭載した製品です。
6コア12スレッドで動作し、基本クロックは3.5GHz、最大ブーストクロックは4.4GHzです。
TDPは65Wと省電力でありながら、高い処理性能を発揮します。
Precision Boost 2やPrecision Boost Overdriveなどの技術に対応し、負荷に応じて最適なクロックを自動調整します。
CPUクーラー「Wraith Stealth cooler」が付属し、静音性と冷却性を両立します。
PCI-Express 4.0に対応し、高速なSSDやグラフィックボードとの接続が可能です。
ソケット形状はSocket AM4で、対応マザーボードは豊富です。
ゲームや動画編集などの多くの用途において、コスパと性能のバランスの良いCPUです。
- 現行パーツ(Ryzen 5 1600)とのスペック比較表
項目 | Ryzen 5 1600 | Ryzen 5 5600 |
---|---|---|
アーキテクチャ | Zen | Zen 3 |
プロセス | 14nm | 7nm |
コア数/スレッド数 | 6/12 | 6/12 |
定格クロック | 3.2GHz | 3.7GHz |
最大クロック | 3.6GHz | 4.6GHz |
L3キャッシュ | 16MB | 32MB |
TDP | 65W | 65W |
Cinebench R23 (Single-Core) | 900 | 1528 |
Cinebench R23 (Multi-Core) | 6230 | 11500 |
Geekbench 5 (Single-Core) | 900 | 1500 |
Geekbench 5 (Multi-Core) | 4800 | 9000 |
Blender (BMW27) | 4分29秒 | 1分49秒 |
マザーボード:B550M Steel Legend
最安価格:1.5万円(2023/7/23時点)
ASRockのB550チップセット搭載MicroATXマザーボードです。
第4世代/第3世代Ryzen CPUに対応し、高い処理性能と拡張性を提供します。
10フェーズの電源設計やDr.MOSなど、高品質かつ耐久性の高いパーツで安定した電力供給を実現します。
拡張スロットとストレージのM.2スロットはPCIe 4.0に対応し、高速データアクセスが可能です。
Realtek Dragon RTL8125BGによる2.5GbE LANを搭載し、高速なネットワーク通信ができます。
映像出力端子はHDMI 2.1、DisplayPort 1.4、D-Sub 15pinを装備し、内蔵グラフィックスを利用できます。
オーディオはRealtek ALC1220/ALC1200による7.1ch HD Audioで、Nahimicオーディオ機能があります。
RGB LEDイルミネーションやポリクロームRGB Sync機能も備えています。
強化スチールスロットやDebug LEDなどの便利な機能も備えています。
高性能かつコスパの高いマザーボードです。
- 現行パーツ(ROG STRIX B350-F GAMING)とのスペック比較表
項目 | ASUS ROG STRIX B350-F GAMING | ASRock B550M Steel Legend |
---|---|---|
チップセット | AMD B350 | AMD B550 |
CPUソケット | SocketAM4 | SocketAM4 |
フォームファクタ | ATX | MicroATX |
メモリタイプ | DDR4 | DDR4 |
メモリスロット数 | 4 | 4 |
最大メモリー容量 | 64GB | 128GB |
PCIe 4.0 x16スロット数 | なし | 1 |
PCIe 3.0 x16スロット数 | 2 | 1 |
PCIe 2.0 x16スロット数 | 1 | なし |
PCIe x1スロット数 | 3 | 1 |
M.2ソケット数 | 1 | 2 |
SATAポート数 | 6 | 6 |
USB 3.2 Gen2ポート数(Type-A) | 2(背面) | 1(背面) |
USB 3.2 Gen2ポート数(Type-C) | なし | 1(背面) |
USB 3.2 Gen1ポート数(Type-A) | 6(前面に4個、背面に2個) | 8(前面に4個、背面に4個) |
USB 2.0ポート数(Type-A) | 6(前面に4個、背面に2個) | 6(前面に4個、背面に2個) |
DisplayPort数 | 1(背面) | 1(背面) |
HDMIポート数 | 1(背面) | 1(背面) |
S/PDIFポート数 | 1(背面) | 1(背面) |
LANポート数(速度) | 1(1000BASE-T) | 1(2500BASE-T) |
オーディオチップ | ROG SupremeFX S1220A | Realtek ALC1200 |
RGB LEDヘッダー数 | 2(4ピン) | 3(4ピン) |
ARGB LEDヘッダー数 | 1(3ピン) | 2(3ピン) |
VRMフェーズ数 | 6+1 | 10 |
一体型 I/O バックパネル | なし | あり |
最終的な選択と理由
各プランのメリット・デメリットを踏まえ、最終的な選択と理由を述べます。
まず、プラン2ですが、中途半端なスペックアップになるので却下しました。
CPUのみを追加で変更したところで、マザーボードの制約で接続インターフェースの性能は変わらず、グラボ性能が最重要となるAI画像生成や動画エンコードには微妙な選択だと思いました。
また、サポート期間終了が迫るWin10からWin11へのアップグレードができないままであることも、長期運用の観点で相応しくないと判断しました。
続いてはプラン1です。
グラボをアップグレードすることにより、最低限の予算内で確かなパワーアップはできるはずです。
しかし、プラン2と同じく物理的な接続時の制約が残ることを踏まえると、これまた微妙な選択ともいえます。
すなわち、残ったプラン3が最大幸福を得られる唯一の選択肢であり、予算上はギリギリですが、このPCをさらに数年延命するには最善だと思われます。
今後もAI界隈の推奨スペックは更なる上昇が見込まれるので、必要最低限のパワーアップはこの段階でしておくべきと判断しました。
まとめ
今回は6年前に組んだ自作PCのパワーアップについて考えてみました。
現在のスペックと目標を設定し、予算順に3つのプランを立てて評価しました。その結果、グラボ、CPU、マザーボードを変更する プラン3 が最適だと判断しました。
自作PCのパワーアップは楽しいですが、予算や目的に応じて最適な選択をすることが重要です。
また、時代とともに各パーツの用途も次第に大きく変化してきます。
そのため、直近の画像生成AIではグラボが最重要とされているが、もしかしたらその後はCPUの性能アップが鍵を握る、いわゆるPC分野におけるパラダイムシフトが起きてもおかしくはないと考えられます。
スマートフォンやVRデバイスが普及してきたここ数年のIT分野のデバイス変革から見て、今後5~10年でパソコンの在り方やその形態含めて大きく進化するタイミングが来ると、パソコンでできることも楽しみも増えて良いなと思います。
以上、6年前に組んだ自作PCのパワーアップについてでした。
皆さんも自作PCのパワーアップを検討してみてはいかがでしょうか?それではまた次回!